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JOEY BELTRAM
寝苦しい夜にクラブへ行って軽く一杯ひっかけたい、あるいは魅力的な異性との出会いを期待したい、そんな目的ならジョーイ・ベルトラムのパ−ティには行かないほうが無難である。そこに一歩でも足を踏み入れようものなら、遥か宇宙の彼方までもっていかれるか、置き去りにされるかのどちらかだからだ。
ジョーイのDJスタイルはクラブで仲間達と楽しい時間を共有しようといった類いのものではない。極度の緊張と都市の閉塞感、孤独感といったものをパラノイアチックに内包しているのだ。叙情性が全くといっていいほど欠如していて、興味のない人が聴けばほとんど音の拷問に近いかも。(笑)
初めて彼のトラックを聴いたのはいつの頃だったろう。たしかNUgrooveから出していたANNIHILATEだったかR&SのENERGY FLASHだったかよく覚えていない。まだテクノがテクノと呼ばれていなかった黎明期からジョーイの存在は際立っていた。その硬質で荒削りな音の感触と、類をみないドライブ感で、既に独自のスタイルを築き上げていたである。その後、地味ながらもコンスタントにハイレベルな作品をリリース。1999年自ら立ち上げたレーベルから12EP"ARENA"を発表。改めてその才能をみせつける。流行り廃りの激しいテクノ・シーンにおいてその影響力はいまだ絶大なものがある。断言できるのは、間違いなく彼は世代を超えた"本物"であるということだ。
ジョーイの音楽はいわゆる“テクノ“ではない。暴言が許されるならば、これぞまさしく“へヴィメタルミュージック”と呼びたくなるほどのバイオレンスに満ちているのである。まさに天下無双、彼しか創造できない世界がそこにはある。DJプレイも、また然り。