EU Club Report
FUSE − 208 rue Blaes straat 1000 Brussels.
今回の欧州旅行で最も長く滞在したのがベルギーの首都、ブリッセルだ。ロンドンやパリのような華やかさはないものの、グランプラスに代表される中世ゴシック建築が数多く立ち並び、ヨーロッパ独特の重い空気が街全体を支配している。このクールな雰囲気は決して嫌いではない。ちょうど位置的にも西ヨーロッパの中心で、オランダ、ドイツ、フランス、イギリスとどこに行くにもアクセスしやすいという利点もある。個人的に欧州で最も落ち着ける都市の一つでもある。
ベルギーというとイギリスやドイツに比べて音楽的にイマイチ地味な印象を持つ人もいるかもしれないが、じつは知るひとぞ知る世界有数のテクノ生産国なのだ。かって90年代初頭に爆発的にブームとなったレイブなるシーンを引率したのはベルジャンテクノと呼ばれたベルギー出身のアーチスト達だった。20代後半以降の人ならT99のアナスターシャって曲を覚えてる人も多いだろう。ジュリアナ東京でもガンガンかかっていました。意味もなく扇情的に煽る音楽の暴力とも呼べる曲調、エッジの尖ったひたすらソリッドなシンセの音。あれこそ典型的なベルジャンテクノっスね!(笑) テクノの老舗レーベルでもあるR&Sの本拠地はゲントにあるし、(そーいやープラスチックドリームなんて名曲をリリースしてたなぁ)その昔はクレプスキュールなんてマイナーなインディ−ズレーベルも存在していた。ポール・ヘイグとかタキシードムーンとか、アンナ・ドミノとかくせ者アーチストがいたっけ…。フロント242やミート・ビート・マニフェストもベルギーの出身。ボディエレクトロニックミュージック発祥の国でもある。前置きが長くなってしまったが、そんなテクノなベルギーにおいて日本におけるイエロー、ロンドンにおけるMOSのような存在のクラブがここ「FUSE」だ。2001年の4月にはKEVIN YOST、DAVE CLARKEがこの地を訪れていた。
今回参戦したのは最近ミックスアルバムをリリースしたDJ DEEPの凱旋記念パーティ。Kerri Chandler、Blaze、Lil louis等をRISPECTするアーチストとしてあげる根っからのガラージ野郎だ。久々に現れた正統派ハウスDJなんで期待せずにはいられなかった。彼がブースに入ったのは午前1時を回った頃。「YHAAAAA・・…!!!!」津波のような歓声。まってましたとばかりに聴衆は盛り上がる。意外なほどの人気。それに答えるかのようにいきなりFINALLY、SATUDAYと熱い歌モノで飛ばしまくる。ウォ、やるじゃねーか!前半はパーカッション主体のインストや、とろけるような感触のディープハウスなどを交互に織り交ぜ、客の反応を観察しながら丁寧に繋いでいく。この時点ではあなどれない奴…程度にしか思っていなかったのだが。後半に入ると、こいつ本当に白人か?と疑うようなドス黒くブルージーなトラックで落としにかかる。手に汗握る展開。ド−パミンが脳から脊髄にかけて大量に流失していくのがわかる。外界から切り離されたような濃密な時間。ラストはEARTH IS PLACE。鳥肌が立つ。例えようもない昂揚感。そして、プレイタイムが終わると同時にこれまた例えようもない欠落感にとらえられる。終わってしまったのか。アンコールはなし。やられた。焦りというか、妙なジェラシーすら感じてしまった。年もオレと少ししか違わないのに・・・。そのいぶし銀のプレイは、昔からのファンの方には怒られるかもしれないけど大御所トニー・ハンフリーズ大先生を彷彿させるものであったと申し上げておこう。←誉めすぎ!しかし彼、プレイの最中二コリともせず直立不動で黙々と皿を回していた。大舞台なので緊張していたのか、それともあれが彼のスタイルなのか気になる。もしかして機嫌がわるかったのか?
さて、FUSEの内装だが、フロアは1階と2階に別れておりどちらもイエローぐらいのキャパ。音に関しては… これはもうなんていっていいのか…。次元が違うというか…(笑)。電圧が日本の約2倍というパワフルなサウンドシステムの音圧は足の裏までガンガン振動が響き渡り、そのうち建物が崩壊してしまうのではないかとこちらが心配してしまうほど。喩えて言うならイエローが家庭用冷蔵庫だとしたら、FUSEはホテルのレストランにある巨大な業務用冷蔵庫って感じだろうか。もぅ冷え方がじぇんじぇん違いますぅ〜。日本のクラブの音に慣れてる人は逆に音が悪いと感じてしまうかもしれない。
宴は明方の6時まで続き、まともにブリッセルを観光できないまま、次の都市ミラノに向かう私であった。