GOLDIE
ムンベ界のマイク・タイソンことゴールディ。とにかく何かとお騒がせな男である。ビョ−クとの恋愛騒動、リム・ハウレットとの確執、ハリウッド映画出演、パブの店主の頭をガラス製の灰皿で叩き割って逮捕されたりと、(笑) 音楽以外にも、その話題性には事欠かない。
しかし、ドラムンベ−スといったマイナ−な音楽をメインストリ−ムへ浮上させるきっかけを作ったのは間違いなく彼だし、その影響力と才能は認めざるを得ないだろう。
1996年に「Timeless」で彗星のごとくデビュー。(今聴いても全く古さを感じさせない傑作) 一躍英国音楽界のキーパーソンとなった。
ゴールディといえば"DJ"というより、フロントラインにたってシーンを先導するオリジネータ−としてのマス・イメ−ジが先行しているかもしれない。
現在もそのカリスマ性は健在であるが、一時期の勢いが衰えたことは否めない。むろん、本人も現在のポジションに甘んじているわけではなく、巻き返しを狙っている筈である。メディアの注目が集まることに快感を覚える典型的なタイプだからだ。(笑)
1999年に「SaturnReturnz」をリリ−スして以来、ここ最近は目立った音楽活動はしていない。実際の製作は"Optical"をはじめ、他のア−チストに委ねているとはいえ、やはり深刻なスランプなのだろうか。メセニ−やピンクフロイドの音楽を愛し、レゲエやヒップホップにも造詣が深い彼のことだがら、かえってドラムンベ−スにこだわらないほうがいい仕事ができそうな気がするのだが。意表をついて、いきなり渋いR&Bのアルバムをリリースしてしまったりしても、決して驚きはしないだろう。奴なら十分クオリティの高い作品を創りあげることができるだろう。しかし、あえてそれをやろうとしないのは我こそがドラムンベ−ス界の盟主であるという強烈な自負があるからに違いない。
クラフィックアーチストからミュージシャンへ華麗なる転身を遂げたゴールディだからこそ、なにかまた凄いことをしでかしてくれるのではないかという期待がある。いい意味でファンを裏切るアーチストであってほしい。
DJとしてのスキルは疑問符?はっきりいって巧くない。これでお客さんの前でお金を取れるの?っていうくらい下手糞である。まぁ、本人も上手くなろうと思っていないだろう。だが、なかなかどうして、ゴールディのプレイは侮れない。ただひたすら攻撃的な、がむしゃらなパワーで突っ走っていると思いきや、それだけではないのだ。天上に舞い上がるような高揚感、都会のジャングルを駆け抜けるような疾走感といった、まさにDrum'n'Bassの真骨頂ともいうべき至上のカタルシスを堪能させてくれる。スタジアムクラスの会場で10000人以上のクラウドを前にして、少しも動揺もせず、力でねじ伏せるようなプレイが可能なのは英国DNB界広しといえども、彼以外にはJTLブケムぐらいしか思いあたらない。そのキャラクター、存在感は今もなお魅力的であることには変わりがない。復活を待つ。