EU Club Report
MINISTRY OF SOUNDS − 103 Gunt St SE1 London.
4月下旬のロンドン。夜はまだ肌寒い季節だ。イギリスは物価が高いときいていたけど本当だった。ホテルにしてもレストランにしても、他のヨーロッパの都市と比べて確実に1.5倍ぐらいは割高に感じる。クラブの値段も東京とほとんど変わらない。週末、待望のミニストリーオフサウンドに単身参戦する。Admission15ポンド。日本円にして2500円ぐらい。DJ陣はDavidAlvarado、DavePiccioni、BennyRodriquezなる面子。3人とも初めて耳にする名前である。ちなみに4月上旬にはジョーイ・ネグロ、ロード・G、ロバート・アルマーニと日本でも御馴染みのビッグネームが回していた模様。もう少し早くロンドンに着いてればジョーイ・ネグロのプレイが聴けたのにと思うと残念でならない。
MOSのフロアは3つのゾーンで構成されている。エントランスを入ってすぐ真正面にバーカウンターとメインフロア。さらに右奥へ入ると10メートル四方の正立方体に近い天井の高いフロア。その上にも、バーカウンターつきの和みスペースがある。とにかく広い。勿論それだけではない。左奥には他のフロアと完全に独立したドリンク持ち込み禁止の巨大な空間がある。いったん中に入れば周りは漆黒の闇に包まれ、VJ、スモーク、レーザーなどの過剰な演出は一切なくシンプルそのもの。いかに気持ちよく音楽に集中して踊れるかを真剣に検討した結果、でてきた答えがこのスタイルだったのだろう。しばらく踊っていると平衡感覚が麻痺してきて、宇宙遊泳をしているかような...4つ打ちのKICKが自分の心臓の音とシンクロし、まるで母親の体内にいるような感覚。コレは一度味わうと病み付きになる。このフロアこそがヨーロッパで最も音のいいハコと称され、流行り廃りの激しいロンドンのクラブシーンにあって、他の追随を許さないMOSの最大のセールスポイントなのだ。作る飯は不味いくせに、グラフィックデザインとか、緻密なサウンドメーキングとか、イギリス人はこういった探求心が尋常じゃない。以前、英国留学していた知人からMOSは凄い!と何度も聞かされていたけど、成る程こうゆうことだったのかとやっとその意味が理解できた。おそらくこのハコの設計、内装を手がけた人物はかなりのダンスミュージック愛好者だったにちがいない。足に負担をかけない床の固さとか、微妙な光のライティングとか、あえて目立たないように配置されてあるDJブースの位置とか、建物の細部にいたるまで心憎いこだわりが随所に見受けられる。こんな場所でプレイできたら、まさにDJ冥利に尽きるだろう。
客層は今までいったクラブの中で最も幅広い年齢層だった。ミスター・ビーン系の親父から、メリル・ストリープ似のオバハンまで、気負わず、あくまでもナチュラルに音楽と踊りを楽しんでる感じ。排他的な雰囲気はこれっぽっちもない。もっと尖がった人種が集まっていると思っていたのだけれど、いい意味で予想は完全に裏切られた。クラウドも異常なほどフレンドリーで、嬉々として踊っているとすぐさま場所を譲ってくれたりする。こんなことは東京はおろかヨーロッパのクラブでも初めての出来事だったんで感激してしまった。週末クラブへ行くという行為が特別でもなんでもなく、すでに日々の習慣となっている、そんな人達でフロアは埋め尽くされている。意外にも、ドラッククイーンとか目立った格好をして踊っている人はあまりみかけず、皆Tシャツにジーンズといったラフな服装が多かった。
さて、肝心のDJプレイはどうだったかというと、やはりUKガラージ中心。しかも変態系、ゴスペル系とバラエティあふれるセレクト。KING OF MY CASTLE、DONT COLL ME BABY、というちょと前のヒット曲もかかるのだが、どれも極端なイコライジング処理で歪ませたリミックスバージョンでどうやって反応いいのか体が一瞬固まってしまった。(苦笑) どちらかというとUKよりもUS寄りなワタシ、そろそろ休憩かなと退散しようとしても、タイミングよく妙に心地良いインストものがかかったりして、どうしてもフロアから離れることができない。オープン直後にINし、気がついたら朝になるまでずっと踊り続けていた。イヤ〜、恐るべし!MINISTRY OF SOUND…。そこは世界中のどんなクラブが束になってもかなわない独創性、大英帝国の誇りと歴史、威厳と貫禄を感じさせるハコであった。こんなクラブへ毎週末通えるロンドンの人たちを羨ましく思うのは小生だけではない筈。 ロンドンにはフリッジやピポドロームなどの要チェキクラブが他にも何件かあったのだが、ここMOSとHEAVENでお腹一杯になってしまった。物価も高いとあって、早々にアムスに引き上げたのだった。次にここを訪れるのはいつになるだろう。