親が高齢になると遺産がいくらになるのか?兄弟などがいるとどう分けるのか?誰も住まなくなる不動産の処理をどうするのか?などが気になりませんか?
「子供は親の財産をあてにすべきではない」・・。そんなタテマエはおいといて、子供であるあなた自身のこれからの生活に財産は必要です。
そもそも親の金は、家族の負担により積み上げられた親族の財産でもあるのです
また、親のお金とはいっても、相続は法律で認められた当然の権利です。そして、その親の死はいずれやってきます。
だから、不安に備えてできることをやっておくことは、必要なことです。やれることをやらずに後悔するよりもはるかによいでしょう。
1 まず遺言を書いてもらう
自筆証書遺言はすべてを全文、日付、署名のすべてを親自身に書いてもらい、押印すれば出来上がりです。押印は認印でも、拇印であっても構いません。
これだけでも書いてもらえれば、後にいろいろ問題(後記)は残りますが、かなり楽になります。
2 どうやって書いてもらうか
親にしてみれば直視したくもない自分の死を前提とした遺言などは書きたくないものです。
日ごろから親と接触し、嫌がる話題を出さず、かつ、子供側の金銭的な必要性を少しずつ何回も話す、こんなところから始めるとよいようです。
これまで遺言を親の立場で書かれた依頼者の動機は、
① 子供たちの仲が悪くその中に唯一親に親切にしてくれる子供がいるから財産を渡したい、、
② 子供がおらず放置しておけば交流のない兄弟に遺産が渡ってしまうが、親身に面倒を見てくれる元配偶者の兄弟の子供(甥)がおり財産を渡したい、
③ 子供がおり同居しているがとじこもりで家庭内暴力があり、残された配偶者が不憫だから財産を残したい、
④ 同居してくれる子供に遺産を遺したい、
⑤ 家業を継いでくれる子供に遺産を遺したいが、足しげく通い賃貸物件の管理もしてくれる他の子供にも財産を残したい などというものがありました。
また、親自身や親族友人が病気をしたことが、遺言や生前贈与のきっかけになっている場合が多いようです。
親が子供のために遺言を書く前提として、
① 日ごろからの接触、
② 親の嫌がることを言わない、
③ お互いにうっとうしくない適度な距離感、(週一程度の接触)
④ 病気など大事があったときに助けてくれる安心感、 などがあるようです。
これらを踏まえたうえで嫌がられない程度に遺言の話をし、親自身やその友人の病気などのときに真剣な話にもっていくのもいいでしょうね。
そして、親の遺言へのアレルギー反応が強い場合は、1のような短い自筆の遺言を書いてもらう程度に留めておくこともあってよいでしょう。
3 兄弟がいたら(遺留分)
さて、先ほどの1の自筆遺言を親に書いてもらった長男(織田信忠)には妹(お市)がおり、遺言を書いた織田信長の妻(濃姫)も元気でいたとします。
この状態で織田信長が死亡すると、この遺言が発効し、戸籍収集・法定相続情報一覧図の取得・検認をした場合、これらを使って長男は親の不動産については単独で相続による所有権移転の登記ができ、預貯金・株・債権などについては単独で自己の口座に入れることができます。
しかし、妹(お市)と妻(濃姫)には遺留分があるのです。
2018年6月31日までに親がなくなった場合、遺留分を請求されると不動産に妹や妻の持分の登記がつき、この不動産を売ったり担保をつけることがとても困難でした。この持分を盾に交渉されると時間と手間がかかっていました。
2018年7月1日以降に親がなくなった場合、遺留分を請求してきた妹と妻に対して長男は、遺留分に相当する金銭を渡せばよいことになり、この金銭は遺産の中の預貯金でも相続した不動産を担保に銀行から借りたものであっても何でもよいことになりました。
1のような簡単な遺言でもその後の処理がとてもやりやすくなったのです。
4 過去に贈与を受けていたら(特別受益のもち戻しの免除)
さて、遺言のない場合や遺言があっても一部の遺産の割り振りしかしていないような場合は、遺産分割協議や調停・審判が必要になります。
あなたが、親から贈与を受けていたような場合、他の相続人は、あなたの特別受益を主張して、あなたの相続分を減らそうとします。
しかし、これも親に遺言を書いてもらうことで防ぐことができます。一言
と書いてもらえばよいのです。
たったこれだけの遺言を書いてもらうだけでも結果は変わってゆきます
5 親の面倒を見たら(寄与分の明確な書き出し)
あなたが、親の面倒を見ていたとします。(親族としての)程度を超えた介護などは寄与分として遺産分割調停・審判の中で主張することが可能です。
この、あなたの寄与を遺言に書いてもらっていたらどうでしょうか。ほかの相続人も裁判所も寄与を認めやすいのではないでしょうか。
6 遺言執行者(防波堤)
さて、親が遺言を素直に書いてくれる場合は遺言執行者についても書いてもらうべきです。
2018年7月1日から施行されている民法により遺言執行者の権限がいろいろと強化されましたし、そもそも遺言執行者が置かれていると、相続人は勝手な遺産の処分や遺言執行を妨げるあらゆる行為ができなくなります。
遺言執行者には、遺言の執行を妨害しそうな相続人を威嚇するためにも、弁護士や司法書士を書いてもらうとよいのですが、遺言により遺産を受ける相続人(1の遺言では長男 織田信忠)を遺言執行者として遺言に書くことも可能です。この場合は、遺言執行者である織田信忠の代理として弁護士や司法書士を選任し、遺言執行者としての作業を丸投げしてもよいでしょう。このように丸投げしたい場合は1の遺言に続けて
と書いてもらう必要があります。
7 証拠を残す(動画)
ところで、1のような自筆遺言が遺された場合、他の相続人である妹(お市)や妻(濃姫)は「その遺言は織田信長の筆跡ではない!!」などと争ってくる場合があります。
これをできるだけ防ぐためにはいくつか工夫が必要です。
(1) 押印は認印でも何でもよいが、できれば親の実印にし、親の印鑑証明ももらっておく。
これだけで他の相続人は争いにくくなりますが、印鑑証明まで渡すことに抵抗感のある親がほとんどでしょう。
(2) 遺言を自筆で書く場面を動画で撮影しておく。
親本人がその遺言を書いたことを動画にしておけば争いにくくなります。
この場合は親自身が偽物ではない本人であることも示すため、免許やパスポートなど親の写真付き証明書も書いている遺言の横に置いておいて、同時に撮影しておくとよいでしょう。
8 争いを防ぐ(付言)
親のほうでも、遺言を書くにあたって子供たちなどに言いたいことがあるはずです。なぜ1のような長男(信忠)のみに遺産を遺す遺言を書いたのか?妹(お市)が冷たい態度をとったとか、信長が病気をしたときすぐに見舞いに来てくれなかったとか、ほかの相続人が納得できるような事柄を、遺言の本文とは別に書いておくことも争いを防ぐことにつながります。
9 どんな遺言を書いたらよいか(相談)
いかがだったでしょうか、
たったこれだけの遺言で、長男織田信忠はほかの相続人に対し絶対的に有利になります。
もちろん、いろんな立場でいろんな遺言とその後の手続きが考えられます。
遺言の内容、遺言執行の方法など、ご相談を松尾事務所ではお受けしております。
また、親の生存中に施設費用をねん出するため持ち家を売りたい、と言った場合は信託が使えますが、このような相談など相続に関するあらゆる相談もお受けしております。
■ご相談は完全予約制です
必ずお電話で予約をおとり下さい
■初回ご相談は30分を目安に無料で実施しています
(以後は30分経過毎に5,500円(税込)の相談料をいただいております)