(高校3年多摩美術大学グラフィックデザイン科合格 試験課題再現デッサン)


  先ほど、尾関さんの人生の分岐点となる作品と書きましたが、実はこの年の多摩美術大学グラフィックデザイン科の平面構成試験課題が「FACE」だったのです。文字こそ英語と日本語の違いはありましたが、同じテーマだったので、尾関さんは前回とほぼ同じ構図で挑みました。私のアドバイスを素直に受け入れ、目や口元に艶っぽさを加え、かんざしの形状を楕円にて柔らかにし、文字を櫛に見立てて髪に配置させました。

試験後、この一連の話を聞いたのですが、私は「それを描いたか…」と、一瞬思いました。というのも、大胆な構図なので、見る人が違ったら好みが大きく分かれそうだと感じたからです。合格できなかったら、私の責任か?!とも。合格したので、私の肩に乗っていた重圧も取れました。

 この再現作品を合格発表後に描いて貰ったのですが、改めて大胆な構図だなぁ〜。勝負に出た作品だったなぁ〜と思いました。その勇気というか、私の言葉を信じてやってくれたことに、私事のように嬉しかった。まさに一緒に受験している気分でした。


  (高校3年受験直前 平面構成)


 受験を目前に控えた頃、尾関さんの平面構成は、連続してピックアップされるほどでした。ただし100%ではなく、常に私のダメ出しがどこかに必ず入る感じでした。

 「ストーブ」をテーマにした作品。ストーブに当たる手で、ストーブのぬくもりを表現しました。文字もストーブ上に配置し、まるでケトルか鍋がストーブに置かれているかのようになっています。この辺りは当初蒸発する湯煙で文字が表現されていましたが、「どうせならと、水が沸騰し湯煙に変化するまでを、文字の中にネガポジでやったら?」というアドバイスから、ここまで充実した作品になりました。あくまで主役は指とストーブの枠ですが、背景の色を文字の中に取り入れることで、文字も邪魔にならない程度に手数を増やし、そこに配置した必然性も与えられました。全体に仕事量も増え、手数でも浪人生にも負けない作品になったと思います。 

 これだけの表現を、自分の力だけでやれれば、必ずや合格できると思いました。入塾当時、「ベクトル」の課題で、中学生が描くような作品を描いていた尾関さんも、たった1年でここまで成長しました。効率よく技術を伸ばしてこられました。その成長ぶりたるや、素晴らしかった。
 
   (高校3年夏期講習会 平面構成)


 「顔」をテーマに描いた作品でした。連日、多摩美術大学グラフィックデザイン科の対策です。この作品が、後の尾関さんの人生の分岐点となることは、この時、誰も思いませんでした。

 私が受験生なら、こんな大胆な構図は恐ろしくてできません。舞妓さんをモチーフに顔をデザインしたわけですが、片目と口も含め、ほとんどを弧(こ)だけで表現しています。実は、この作品をピックアップ(良作の参考作品)しました。

 しかし、チャックも入りました。例えば、かんざしの円が目立ちすぎて、視点が逸れてしまっていることや、テーマは顔なのだから、例えば唇や目に艶っぽさを出した方がいいと、アドバイスしたのを覚えています。文字の位置も良くない。文字の位置に必然性を感じない。いっそのこと文字を櫛(くし)に見立てて、髪に挿してしまったらどうかとも言いました。
 チェックは多く入れましたが、これだけ簡素化し、円や弧だけで舞妓さんを表現したのは面白かった。


   (高校3年終盤 平面構成)


「アニマル」をテーマに、鳥をモチーフにした作品。電柱の大胆な入れ方、電柱の表現は上手くいっている。明度の低い鳥のシルエットは面白い。しかし、透明表現の鳥の使い方が失敗している。視点を手数の多い透明表現の鳥に持って行きたかったはずが、明度の低い鳥のシルエットに持って行かれてしまった。そういった所をどう対処していくか?他に見せたいところを上手く見せる手段はなかったか?受験まで残り僅か…。構想(エスキース)の段階での熟考が問われる作品だ。なかなかピックアップされない日々が続きます。


  (高校3年中盤 平面構成)

 テーマは「京都」でした。尾関さんは枯山水を表現しました。ネガポジの使い方も上手くなっています。枯山水特有の砂の筋の遠近法で、「見えない床」が見事に見えています。しかし、私としては、砂の表現をもっと砂らしく見せられないかを追求して欲しかった。見せ場が「手前の岩と松の木」と「砂」が同等になってしまっている。私としては比重を砂に持って行って欲しかった。この場合、岩と松の木をこれ以上簡素化して視点を軽くするより、砂を砂らしくしたい。例えば、砂と背景の明るいグレーの明度をもう少し上げるなり、場合によっては、背景を白地にグレーのドットで表現しても面白かったかも。そこまでやってくれたら、圧巻だった。


  (高2年冬期講習会 平面構成)


 尾関さんが美術の世界に足を踏み入れてから、わずか2ヶ月。受験を間近に控えた3年生に混じって、尾関さんが冬期講習会で描いたこの作品に、私は光るものを感じました。テーマは「乗り物」でした。尾関さんが選んだ乗り物は「エレベーター」でした。「エレベーター」をチョイスした時点でOKなのですが、学んだばかりのネガポジを使って、足下だけでエレベーターを表現したのは面白い。私は、この作品を見て「この子は、上手くなる!」と確信した作品でした。

 作品としては、まだ荒削りです。もっとエレベーター感を出さないと、エレベーターに乗っているというのが伝わりません。そういった所をクリアーにしていけば、必ずや良作になると思いました。


  (高校3年夏期講習会 平面構成)


 課題は「富士山」。丸い単純な形の雪だけで、富士山のフォルムを出してしまった所は、痛快です。しかも、文字に雪を乗せたのは、面白い。アイデアが素晴らしい。ただ、富士山の形が悪すぎる。デフォルメしたのだろうが、この富士山は魅力的な形をしていない。そういうチョイスができるようになってほしいと感じる。エスキースを正確にできていれば、「こんな形には良くない…」と、感じられるはずだ。


    (高校3年初期の平面構成)


形が随分と洗練されてきました。文字の必然性にも気を配れるようになってきました。草の形はシャープでいいと思いますが、牛の模様をもう少し整頓できなかったのか…そう感じてしまいます。牛の口元に導線を持っていきたいのに、牛の模様に目が行ってしまいます。そういう所の感性を、もっと磨いて欲しいと思う作品です。


  (高校2年後終盤の平面構成)

 課題は「メモ帳」。色彩やネガポジ表現などの技法を学び始めると、作品もガラリと変わってきます。デッサンも同時進行で頑張っていると、平面構成の形や線も魅力的になってきます。

 この作品は、厳選された色でインパクトはありますが、いかんせん視点(見せ場)が散漫になっています。やりすぎ感満載で、一体何を見せたかったのか、よく分からない作品になっています。  


  (高校2年11月入塾時の平面構成)


 アトリエに入塾して最初の平面構成です。テーマは「ベクトル」でした。大学入試レベルからは程遠い、「中学生の美術」の作品です。ダメ出ししたら溢れるほど出てきそうな作品ですが、これが尾関さんの出発点なのです。最初は、皆さん、こんなものなのです。

 始めたばかりなのですから、まだデザインとは何なのか、表現とはどんな事なのかが、全く分かっていないのは当然です。ここから、一つ一つ学んでいくのです。

 最初の指導は、「視点…見せ場」から始まるのでしょう。何を見せたいのか、何が主役なのか、それを見せるために脇役をどうしたらいいのか…そんな所から始まるのです。

 (高校3年多摩美術大学合格 試験課題再現デッサン)


 試験課題は「料理をする手」でした。アトリエ波では、「料理する手」を平面構成ではやりました。「仕事をする手」、「道具を扱う手」もやりました。合格発表の後、尾関さんに再現してもらいました。「ピューラーの使い方を教える人」だそうです。尾関さんの性格「描きすぎる…」ところが出ました。教える人の手が、はたして必要だったのか…。私ならピューラーを使う人だけにします。構図がよく、しっかり描けていれば、それだけで十分だったと思います。尾関さん曰く、「周囲を見渡しても、手を3本入れている人はいませんでした。」と…。合格したのですから、結果3本で良かったのでしょう。
 ピューラーの角度が正面を向いていますが、私ならばもう少し右側に傾けて、ピューラーに奥行きを出します。

 最後まで酷評ですが、まだまだ発展途上の尾関さんです。計算すると1日3時間、延べ180日(550〜600時間)の講座で、多摩美術大学グラフィックデザイン科に合格しました。、私としては、もう一年くらい私の元で学んで鍛えられてから、大学に進学して欲しいくらいです。でも、言い換えれば、尾関さんはそれだけ効率よく、短期集中で学んだと言うことでしょう。大学に進学しても、その勤勉な姿勢を貫いて、沢山の技術を習得してほしいものです。期待しています。



 (高校3年終盤 構成デッサン)


 いよいよ受験が目前に迫ってきました。ピックアップされた作品です。「結ぶ」というテーマで、小指と小指を赤い糸で結ばれたカップルを表現しました。光も美しく、質感、量感もでました。画面構成も迫力あり、受験に間に合いました。試験時間と同じ5時間で、ここまで描くことができれば、望みは出てきました。




 (高校3年終盤 構成デッサン)

 これもピックアップになっていません。うまく描けているようにも見えますが、私は満足いきません。まず、手には魅力的な形、表情というものがあります。ペンと封筒を持つ左手は、まずまずです。しかし、手紙を引き出そうとする右手の形が、ちっとも魅力的に見えません。左手の形と大きく変化をさせるために広げた手にしたのでしょうが、その形が面白くなくてはいけません。ほぼ見せ場となる手なのですから、もっと神経を使いたかった所です。しかも指や手のひらの厚みに、その形態感を感じません。私ならば、右手の内側を手前(小指を画面下)にして、親指と人差し指で手紙を引き出す構図にしたでしょう。



 (高校3年中盤 構成デッサン)


 イメージを膨らませ、目の前に無いモチーフを想像でも描け、どんな試験課題にも対応できるようします。自分の手だけでなく、子どもの手、お年寄りの手も描けるように訓練をしました。若者がお年寄りにスマフォの操作を教えている…という設定です。まだ、お年寄りの手に質感がありません。アトリエでは、描いた作品で良作と思われた作品はピックアップされますが、なかなかピックアップの対象にならない日々が続きます。

 お年寄りの手のシワが不自然で、描けば良いというものではありません。大切なのは「ナチュラル感」です。見ていて「うん?」と思わせたらアウトです。そのナチュラル感を出すには、枚数です。観察して、描き続けていくことが大切です。日々訓練です。
 

 (高校3年冬期講習会 静物デッサン)


受験シーズンに入りました。本番までカウントダウンが始まりました。アトリエに通い始めて、延べ160日目くらいです。随分と形態感も出てきました。丸い物は丸い、筒状の物は筒状に、物の形をしっかり捉えることができるようになりました。光もきれいに見せています。尾関さんのウィークポイントは、きっちり描き過ぎてしまう所です。それがストロングポイントでもあるのですが、その出し引きがデッサンには必要なんですね。デッサンの「美しい空間」を作るには、描き過ぎても…というのがあると思います。細密描写とは違ので、そのあたりが分かってくると、もっと美しい空間作りができるのでしょう。しかし、受験静物デッサンとしては、合格ラインに手が掛かりかけています。もうほんの少しです。




 (高校3年中盤 構成デッサン)
手が固いんですね…。ビーチボールのような手の質感になっています。透明パイプに指が張り付いている雰囲気は表現できていますが、大切な皮膚感が無いのが残念です。手の甲と手のひらを見せて、変化を付けることは出来ています。この頃になると、日々手のデッサンでした。毎回のダメ出しで、誉められることは殆どありません。しかし、そのダメ出しを生かすのが尾関さんでした。その一つ一つを自分の課題にして、少しずつクリアーしていく姿がありました。




 (高校3年中盤 自画像デッサン)

 本人の性格が表れています。真面目に描いているのは分かりますが、まだ心惹かれるデッサンには程遠いです。綺麗に描けるのですが、画面に勢いや迫力がありません。証明写真の様な絵になっています。表情や構図にも工夫がなければ、絵に魅力が出ません。そういった所も表現力のひとつで、大切なところです。




 (高校3年夏期講習会 構成デッサン)

夏前に志望校を具体的に多摩美術大学グラフィックデザイン科にし、手のデッサンを中心に描き始めた頃でした。テーマは「道具を使う手」でした。刷毛で大胆に色を塗る場面を、ダイナミックに描いています。この日、特別講師で現役多摩美大生が来てくれていました。絶賛していました。垂れている塗料の雰囲気も、そのセンスを感じる作品でした。



 (高校2年11月入塾時の静物デッサン)

 アトリエ波に入塾して、初期のデッサンです。まだ床と平行な面作りもできていませんね。鉢植えに楕円やブロックの右側への奥行きなどのパースの狂いもあります。
ただ、調子の付け方や質感を追おうとしているのは、デッサンからもよく伝わってきます。誠実に取り組んでいる感じです。こういうデッサンを最初から描ける子は、上達も早いと思います。

 高校2年冬からの美大受験は、けして遅くはありませんが、でも1年生や2年生からスタートしている受験生と比べたら、スロースタートです。受験する大学によっては、週1日や2日のレッスンでは合格はできません。 受験する大学に明確な物があれば、週に何日通えばいいのかも、具体的な数字を提案することができます。


 (高校2年冬期講習会静物デッサン)

 現役3年生も受験間近という中で、一緒の課題に取り組めるのは、先輩達の制作プロセスを自分と比較でき、自分の作品と見比べができるので、自分には何が足りないのかがよく分かります。冬期講習会は、技術向上の絶好の機会です。

 6時間での制作で、仕上げることができていません。描くことで一杯一杯という感じです。しかし、光の方向を意識して、空間を作ろうとしています。縄の描写に単調さが否めません。茄子や手前のキウイの形態感も今ひとつです。回り込みの弱さを感じます。

 しかし尾関さんのすごい所は、講評会後に先輩に歩み寄り、先輩の作品を写メに撮らせてもらっていました。その図々しさが素晴らしい。どん欲さがないと、美大合格はできません。

 私は、高校2年生の11月に美大への進学を考え、このアトリエ波に通い始めました。遅いスタートだということは自覚していたので、始めたばかりの頃は焦ってばかりでした。しかし通っていくうちに、「すぐに上手くなるはずないんだから、焦っても無駄だ」と思い始め、代わりに課題の一枚一枚をしっかり描いていくことに意識が向かいました。

 私は全くの初心者だったのですが、先生はそんな私にデッサン用語などを一から丁寧に教えてくださいました。いきなり高いレベルを要求されることなく、初心者に目線を合わせた教え方をしてくださるのでとても分かりやすく入りやすかったです。

 デッサンも平面構成も、「基本となるポイントが押さえられている作品」が受験では強いと私は思います。実際、過去の合格作品を見ていると、一見全然違うような作品でも「ポイントが確実に押さえられているなぁ」と感じましたし、これは大学側が公式にアナウンスしていることでもあるように思います。

 先生はそんな基本となるポイントを、私に何度も何度も繰り返して教えてくださいました。一回で出来るようなセンスのいい人間ではなかった私は、何度も同じことを指摘されていましたが、根気強く教えていただいたお陰でなんとなく形が掴めていけたような気がします。

 大手予備校とは違い、少人数だからこそ一人の作品に長い時間をかけて先生が向き合ってくださる所がアトリエ波の長所だと思います。また、上手くなるには、受け身ではなく多少図々しいくらいに前のめりになることが大切だと思います。これは私が入ったばかりの時に先生に言われた言葉ですが、「図々しくいかないかんよ!」と言われたのを鮮烈に覚えています。受験合格には、先輩の作品を見て学んだり、インターネットで他の予備校の作品を見たり、自分から研究する姿勢がとても大事だと思います。

 さらに、「大学に入るのがゴールではなく、それからが本番だ」というのも先生の言葉です。
アトリエ波で学んだ姿勢を大切にしながら、これからも努力を続けていきたいです。
2014年度卒 河合春果さん
   岐阜県立関高等学校2015年度卒業

多摩美術大学 グラフィックデザイン学科合格(現役合格)
多摩美術大学 統合デザイン学科(現役合格)
東京造形大学 グラフィックデザイン学科
女子美術大学 芸術学部デザイン・工芸学科(ヴィジュアルデザイン領域)

2015年度卒 尾関花那さん





















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(受験直前の平面構成)

 多摩美術大学受験の直前に描いた作品です。もうこの頃の平面構成は、描く作品描く作品全てが、参考作品となるピックアップの連続となっていました。ノリノリなのが、作品からも伝わってきます。線や形も洗練されてきています。山田さんも受験に照準をピッタリ合わせてきました。
 
 入塾当時に描いていた「三竦み」と、この作品が同一人物が描いた作品とは思えません。



 (3年生終盤の平面構成)

 手とメモ帳の構成です。優しい色使いながら、リズムがあり、デザイン要素も高く、ます視点がいいですね。優しい色使いになると、画面が大人しくなってしまいがちですが、リズムがあることでそれを補っています。彩度を落とした四角い赤が、画面に変化と緊張感を持たせているのもいいですね。

 平面構成が安定してきました。



 (3年生中盤の平面構成)
 
 日本の特別天然記念物「トキ」をテーマにした平面構成です。いよいよ簡略化が始まりました。最小限の単純な形で、いかにインパクトを生み出すか。何をどう見せたいか…の研究がピークを迎えています。

 朱鷺の文字の入れ方にやや問題はありますが、トキの大胆な構図は痛快で圧巻です。小細工無しのストレート勝負という感じです。制作がノッて来ているのが分かります。




 (3年生初めの平面構成)

 随分とデザインらしくなってきました。余分な物を排除し、学んだ技術を色々と試しています。海の中の雰囲気は良く出ていますが、いかんせん主題の魚の形に魅力さが足りない。もっと生き生きとした魚を描けないものか…。

 でも、作品から山田さんが楽しんで絵を描き出しているのが伝わってきます。





 (2年生後半の平面構成)

 対比の課題です。粗と密も理解しだし、美しい色の見せ方も、徐々にですが分かってきた様子が分かります。しかし、まだ何が見せたいのか、どの形を見せたいのかがはっきりしていません。もう少し焦点を明確にし、整理整頓していく必要があります。






 (2年生中盤の平面構成)

 果物の構成でした。ようやくデザインという物が何かが、何となく分かって来た頃かな?と感じさせる作品でした。まだまだインパクトも弱く、色の美しさも感じられませんが、少しずつですが、上達している気配がありました。








 (2年生前半の平面構成)

 お菓子のパッケージからの平面構成ですが、パッケージの要素が生かされていません。まだまだデザインの領域に入っていない感があります。色も美しいとは言えません。ダメ出しが続く毎日ですが、山田さんはくじけずに乗り越えていきました。


 (1年生入塾時の平面構成)

 ことわざからの平面構成を課題で出しました。まずことわざを幾つ知っているかで、表現の幅が広がりますね。絵さえ描けたらいいものでもありません。美術受験は、頭も必要です。
 
 山田さんは数あることわざから「三竦み(さんすくみ)」を選びました。お互いに身動きが取れなくなるという意味です。作品の講評は…まだデザインが何ぞや…という段階です。絵がただの説明になっています。頭に浮かんだモチーフを、ただ並べているだけです。もっともっとデザインとは何か?を勉強しなければなりません。




 (受験直前の構成デッサン)

 顔も上手く描けています。リンゴの臨場感がやや甘いかな?もっとみずみずしさが表現されていれば最高だ。光も綺麗に描けていて、本番に見事に照準をあててきました。





 (3年生終盤の構成デッサン)


  「トングで何かを挟む手」の課題です。山田さんはタコを挟みました。タコだけは想像です。タコがシャキッ!としていますので、茹でダコです。これが絵的には茹でダコではなく「生のだらりとしたタコ」だと、手との柔らかさの対比で良かったのですが、茹でダコにしてしまうと、臨場感もおもしろさも半減してしまいます。

 しかしながら手は申し分なくよく描けていますので、あとは構成力だけです。




 (3年生中盤の静物デッサン)

 とても綺麗なデッサンです。線の荒さも全くありません。ピッチが綺麗に整った面作りができています。調子も綺麗です。いつもはB3サイズを6時間で描いていましたが、5時間に短縮。それでも線が美しくなり、面の荒さも感じないのは、技術が上がってきた証拠です。
 金魚鉢の形態感にやや弱さがありまので、そこを意識して描けば、さらにいいデッサンになります。アトリエの専売特許の「床」も綺麗に描けていて、設置感もあります。







 (3年生中盤の構成デッサン)

 随分と手の質感が出てきました。何度も何度も繰り返し手を描く練習をすることで、技能が身に付いていくのです。ビニールの質感も上手く捉えています。上の手の形は魅力的ですが、下の手の形がよろしくありません。手の形には、必ず魅力的な形や角度が存在します。日頃の練習から、その角度を見つけ出し知っていることが大切です。
 しかしながら、透明なビニールの向こう側に透けて見える指の感じも、雰囲気があり、あと少しというところまできました。もう、線の荒い山田さんの姿は、どこにもありません。繊細さが身に付いてきました。努力の賜(たまもの)です。


 (高校3年生前半の構成デッサン)

 いよいよ受験校も決まり、その大学に応じた課題を軸として取り組んでいきます。手の構成デッサンですが、まだ手を描き慣れていないために、手の表情がありません。
描く手の角度も、魅力的ではありません。

 手にも表情や感情があります。それを表現しないと、手のデッサンの醍醐味は無くなります。温かい手、優しい手、力強い手、たくましい手、か弱い手…。それが表現できるかが、ポイントになります。

 構成も大切ですが、対比も大切です。同じようなポーズの手を二つ見せられても、見る側は面白くありません。異なるポーズにして、画面に変化を与えるとよいのです。
片方が力が入っていたら、片方は力を抜いた手にするとか、片方は手のひらを見せたら、片方は手の甲を見せるなど、工夫が必要です。

 構成力としては、何を見せたいのかを明確にすることも重要です。このはさみを持ったてでは、今ひとつ何を見せたいのか焦点が見えてきていません。厳しい評価になりました。


 (高校2年生終盤の静物デッサン)

 苦しい時期が長く続きましたが、努力の成果もあって、荒れた画面が嘘のように整ってきました。中間色も大切にしているのが、作品から伝わってきます。
 
 山田さんの新たな課題は、固有色です。紙風船の色は、ピンク、緑、黄色、白、赤と様々です。それが画面から、どれが何色なのかが全く伝わってきません。観葉植物の葉っぱも、濃い緑なのですが、紙風船の色より明るく描かれています。これは、画面全体を見ていないと、こうなってしまいます。色を乗せるとき、その周囲ばかりの物と比較して決めてしまうと、全体の色のバランスが崩れてしまいます。画面全体、モチーフ全体が比較材料なのですから、自分の置いた色に疑いを掛け、「この色で本当に大丈夫なのだろうか?」と、様々なチェックポイントから検証していくのです。
使えるようになった中間色を光と影だけではなく、今度は固有色を表現する武器にするのです。

 さらに手前と奥の紙風船に注目してみましょう。奥の方が、はっきりと描かれています。これでは、手前感、奥の感じがバラバラになってしまいます。手前と奥の描き分けによる美しい空間つくりも、今後の課題として浮上してきました。



 (高校2年生中盤の静物デッサン)

 山田さんは、短時間で描く小さなテーブルモチーフになると、とたんに本来の力量を出せなくなりました。焦りが先行してしまいました。
まだまだ形態感も弱く、モチーフによっては苦手意識が出てしまって、苦しむ時期が続きました。ここが、山田さんにとって、二つ目の山でした。
 それでも頑張り屋さんの山田さん、必至に乗り越えようとしていました。

 3年生の夏までは、週1日のペースで通っていました。




 (高校1年生終盤の静物デッサン)

 ついつい熱が入ると黒くなってしまうのが、山田さんのデッサンの悪いところでした。線がまとまっていなく、面が荒れてしまっています。もっと作業に繊細さが欲しいのです。この時期が、山田さんの一つ目の山でしたね。一番苦しんだ時期でした。ここを乗り越えないと、美大合格はないのです。山田さん、頑張りました。
 
 デッサンは、調子の良いときも悪いときもあります。しかし、悪いところが続くとモチベーションがなかなか上がってきませんが、いつかは描けるようになります。継続こそ力なり…。

 もう一度基本に戻り、鉛筆の種類、タッチのバリエーション、きめ細かなピッチ、筆圧の変化…。見直しです。

 (高校1年生中盤の静物デッサン)

 黒と白のコントラストだけで描いていた頃から、中間色が随分と増えました。それにより、優しく柔らかな光が表現できるようになっています。しかし、手前のモチーフの描き込みが弱く、手前感が出ていません。やはり手前にある物は、はっきりと強めに描かないと、画面全体が弱く見えてしまいます。限られた時間内で描くことは、そういったペースというか手数の配分も考えなくてはいけません。

 アトリエの専売特許の「床」の描き込みも、まだまだです。床になっていません。そこまで手が回らないのです。

 しかし、まだ1年生です。とにかく真面目な山田さん。指導者のアドバイスを真摯に聞いて、頑張っていました。



 (高校1年生入塾時の静物デッサン)

 名古屋の大手予備校に通われていただけあって、時間を掛ければまだ荒削りではありましたが、綺麗に描けるようでした。

 黒を恐れずに画面に乗せられる子で、思い切ったデッサンが特徴でした。しかし、形態感がなかなか出ず、レリーフの様なデッサンです。床のパースも狂っており、テーブル上のモチーフが滑り落ちるように感じます。楕円の取り方も甘く、ジョウロの底がレモン状になっています。

 質感にばかり目がいき、量感が弱いのです。原因の一つに、山田さんの強みでもある黒が強過ぎるのと、中間色が少なく、白と黒のコントラストだけで描いている様なところがあるのです。もっと筆圧を変えたり、鉛筆の濃度を変えたり、鉛筆を立てたり寝させたりと、色々なバリエーションが必要なのです。そうすることで、色数も増えて、中間色が出てくる、そして量感が出やすくなるのです。
    岐阜県立関有知高等学校2014年卒業

多摩美術大学 統合デザイン学科合格(現役合格)
女子美術大学 芸術学部ヴィジュアルデザイン専攻(現役合格)

 私は1年生の9月に、名古屋の大手美術予備校からアトリエ波へ移りました。
大手予備校では生徒人数に対し講師の数が少なく、一人に割く指導時間が短く感じることが多く、完成後に「こうすれば良かったね」と指摘されることも多かったです。
 ですがアトリエ波は少人数指導なので先生と生徒の距離も近く、制作途中から先生に細かい指導がいただけ、講評時間も1人の作品に対し最低でも20分以上はかけていただけました。自分の作品のどこがダメなのか、どこがよく描けていたのか、理解を得やすい環境でした。

 課題も1年生のうちから3年生と共通の課題に取り組むので、早いうちから技術が磨けると思いました。先輩達が同じ課題を横で制作しているので、間近で制作過程を見ることができ、デッサンのプロセスを身につけ易かったです。

 アトリエ内には歴代の参考作品が数多くあり、参考資料も豊富で、それらを自由に閲覧でき、自分にはない発想や構成がたくさん得られました。

 通う日も自分で自由にシフトを組めて、余裕のある時は週三日に、学校のテスト期間のときは週一日に、と学業の方へも気が配れたので絵と学業の両立ができました。
私にとってアトリエ波はとても良い美術予備校でした。
2014年度卒 山田愛祐実さん

 (多摩美術大学グラフィックデザイン学科試験再現作品)

 全ての試験を終え、合格発表を聞いた後に試験問題の再現をしてもらいました。この平面構成で多摩美術大学に合格したのです。試験課題は「ROBOT」でした。

 河合さんは、イメージの中で「ぎこちないキコキコと動くロボットを、単純な幾何形体のみで表現しようと思った」そうです。しかし、この作品に辿り着くまでに、3本のコードの配置に拘ったそうです。この作品のポイントとしてまずあげられるのは、その拘りにもあるコードです。一回転させているループ状のコードで、描かれていないはずの「床」を一気に表現して、画面に空間を作ってしまっています。床など一切描いていないのに、そのループを配置するだけで床ができてしまっているのです。凄い技能表現です。

  そしてこのロボットがどういうロボットなのかを、二分した画面構成で簡潔に説明してしまっています。「暗闇では、ストライプに光るのね!」と…。幾何形体のみを使って、スマートに仕上げた作品は、画面にもインパクトを与えつつ、簡潔にストレートに表現してあります。してやったという作品だと思います。


 (受験直前の平面構成)

 多摩美術大学直前に描いた作品です。テーマは「Mountain」です。一切の物を排除して、説明的にならず、単純な形でストレートに山を表現しています。
画面にリズム感もあり、見せ場もはっきりとしています。高く連なる山々を三角形だけで見せる…それだけなのですが、作者の意図がどーん!と伝わってくる作品になっています。

 指導者の立場から、いつも言っていることがあります。
「楽しく描けば、必ず見る物はワクワクする。迷えば、見る者も迷う。楽しんで描きなさい。」…と。河合さんは、きっと、この作品を楽しみながら描いたのでしょう。それが伝わってきます。かなりの手応えを感じながら、受験に向かいました。


 (高校3年生終盤の平面構成)


 金沢美術工芸大学を意識した平面構成です。テーマは言葉の「ガヤガヤ」からの構成です。

 平面構成も円熟期を迎えました。いつ受験しても良い頃です。照準がぴったり受験に合ってきた感があります。ガヤガヤという文字は「文字とは思わせない」様な勢いのある効果を生み出し、文字ではなくパーツとなり、テーマのガヤガヤ感に一役も二役もかっています。騒々しい様を、唇だけを要素に表現した構成は、3年間学習してきた集大成の様にも思えます。テーマを絞り、必要最小限の要素で構成しています。現役高校生の強みでもある元気良さ、フレッシュさも画面から感じます。

 細かなテクニックとしては、奥にも空間を持たせるために、唇の大きさを変えたり、文字の裏側にも唇を配置することで、レベルの変化を生み出し空間を広げています。

 平面構成も3年間で「受験までに100枚」を、軽く超えてきました。

 (高校3年生中盤の平面構成)

 多摩美術大学対策の課題です。「一瞬」という言葉からのイメージ構成です。簡素化することによっておのずと手数が減るわけですが、少ない手数でもそれを感じさせない様にすることが大切です。

 ここに辿り着くまでには、1〜2時間のエスキースを経て辿り着きます。エスキースの段階で、完成のイメージをしっかり持つことが、良作への道です。

 ゆったりのイメージを画面左のグラデーションで持たせ、一気にレッドで「一瞬」を表現しています。この鋭さが大切です。一本の線に「拘り」を持ち、描く姿があります。


 (高校3年生前半の平面構成)

 3年生になると受験校も決まり、課題も受験校に沿った課題が主になってきます。
目標に向かって、はっきりとした課題を持って取り組んでいきます。

 金沢美術工芸大学を意識した「モチーフからの構成」です。バラの花と砂時計の構成です。二つのモチーフを組み合わせて、互いをどう見せるかがポイントとなります。見せ場をはっきりと明確に持つことが大切です。モチーフが多いと、焦点がぼやけてしまいがちになるので注意が必要です。

 画面中央にモチーフを置くと左右対称(シンメトリー)になりがちです。シンメトリーは、画面に静寂をもたらし、動きを止める効果があります。上手く使えばはまるのですが、むやみに使うと、画面が止まってしまい、おとなしくなってしまいます。そこで「シンメトリー崩し」といって、左右非対称にしていくのです。この作品では、バラの葉と背景の色面分割を使ってシンメトリー崩しを試みています。しかし、十分な効果が得られていないように思います。やはり画面に迫力が無く、大人しい作品になってしまいました。現役高校生なのですから、ヘタな小細工を使わず、元気いっぱいフレッシュな作品で勝負して欲しい物です。それが現役高校生の強みなのですから。

 しかしアイデアは、良いものがあります。赤の色も鮮やかにインパクトがあります。




 (高校2年生終盤の平面構成)

 「東京スカイツリーと雲」をモチーフに構成する課題です。多摩美術大学グラフィック学科を意識した課題です。

 画面では分かり難いのですが、雲の一部に柔らかなグラデーションを入れることで、柔らかな表情を出しています。円という単純な形だけで雲を表現し、簡素化を目指しています。

 雲や空の色合いもソフトで綺麗な作品ですが、メインのスカイツリーの形が面白くありません。もう少しスマートに高く見せられないかという所です。形を美しく見せるという技能も、繰り返しの制作から身につけていきます。他の予備校レベルなら、参考作品に成り得る作品でしょうが、アトリエ波ではチョイスされないレベルです。



 (高校2年生中盤の平面構成)

 「楽器の構成」では、一気に技術進歩が見られます。同一色相を使うことで、色数としては多く見せず、しかし手数は多く見せることができます。色も大胆になり、見せたい色が見えるようになってきました。

 モチーフに選んだトランペットの破裂音が、画面から感じられるのもいいですね。しかし、デザインの基本は、「簡略化」が基本です。少ないパーツでもインパクトを見せつける手法が大切です。まだまだ簡略化できそうな部分はたくさんあります。

 ようやく「デザインとは何か」が分かり掛けてきた頃です。


 (高校1年生中盤の平面構成)

 ひらがなを要素とし、画面の左右で対比の関係を作り出す課題です。
 随分と「粗と密」の関係が、理解できてきたように思えます。しかし、見せたい部分がごちゃごちゃで、何がしたいのか、何を見せたいのか、作者の意図が見えてきません。見せたい形、作り出した形をスマートに見せたいところです。
 少ない色で表現するのに、ネガポジというテクニックが必要となってきます。左画面の逆さに描かれている「か」の文字は、背景の色が「か」の中に入り込んでいますが、一部に作った影だけで、「か」の文字を描いています。これをネガポジといいます。そういったテクニックも学習しながら、技術を磨いていきます。


 (高校1年入塾当時の平面構成)


 入塾して間もない頃の平面構成です。丸と四角の中で対比をイメージしての構成です。まだまだ中学校の美術の時間に制作する作品のレベルです。何を伝えたいのか、何を見せたいのかが全く伝わってきません。絵としての見せ場もなく、ただ画面を埋めただけのように感じます。
 作品の中で大切なのは「粗と密」です。粗は大きく大胆に入れ、密の見せたい部分を引き出す。密は、手数を入れて見せ場にする。その「粗と密」が重要になります。
 さらに見せたい色は何か?見せたい色を引き立たせるために必要な色は何かを、画面の中で考える必要があります。最初のレベルは、誰も皆こんな感じです。


 (高校3年4月頃 静物デッサン)

 アトリエに通い始めて、30日目前後の静物デッサンです。美術の世界に足を踏み入れた時期が遅かったこともあり、焦りがあった頃でした。回りの同級生に一歩も二歩も先を行かれているため、アトリエに通う回数も週1〜2のペースから週3に増えた頃でした。

 まだ楕円が描けていません。床にコップが乗っていません。形態感もあやふやです。難しい逆光に挑戦していますが、暗い世界の調子の変化を捉え切れていません。6時間という時間内に描くことで精一杯という感じですね。モチーフの素材が増えてくると、その質感を表すのに苦労しますが、毎日課題を持って、誠実に取り組んでいました。

 (多摩美術大学グラフィックデザイン学科試験再現作品)

 多摩美術大学の合格発表から二週間ほど経過した頃に、試験問題の再現をしてもらいました。このデッサンで、多摩美術大学合格を勝ち取りました。試験課題は「手を握る」という、手のみをモチーフとしたオーソドックスな問題でした。

 周囲は「赤ちゃんの手を握る」を描いている人が、とても多かったと聞きました。
河合さんは、テーマを「プロポーズ」にして女性の手を男性が握る手を描きました。着眼点に、まず脱帽です。自身が女性でありながら、あえて男性の手をモチーフにするあたり、よくぞ考えた!って感じです。やられました。おそらく合格印を押した教授陣も、同じ思いだったに違いありません。「これ、男の子が描いた?女の子が描いた?」という教授陣の声が聞こえてきそうです。大抵、手のデッサンならば、自分の手を見ながら描くのが普通です。でもそこには自分の手しか無いのですから、男性の手を描くには想像力が必要になるのです。イマジネーションの鍛錬の成果だと言えるでしょう。話によると、直前に自宅で男性の手を模写したそうです。そういった努力も合格への道なのでしょう。一度やったことは、自信にも繋がります。まるで受験問題が分かっていたかのような、直前の取り組みでした。
 さらに、作品からは手の持ち主の声が聞こえてきそうです。手に愛が感じられます。男性の腕に浮き上がる血管、女性の薬指にはめられた指輪、女性の手の白さ、男性の手の黒さ、全てが満点と言える作品です。素晴らしい。



 (受験直前の構成デッサン)


 「働く手」をテーマに課題を出しました。河合さんは雑巾を絞るというテーマで描きました。単純な作業ですが、力の入った表情を描くには、面白いテーマです。絞ってしたたり落ちる水もリアルに描けています。
 制作後の講評で、「雑巾」でなく「タオルじゃない?!」と、評価した記憶があります。本人が雑巾というのなら、やはり雑巾らしく描くことが大切です。
 
 しかしながら、「光」を美しく描いていて、手の質感もかなり正確に描けています。
「上手い!」と言わざるを得ません。





 (高校3年生中盤の構成デッサン)


国立対策での課題です。身体の厚み不足ですが、メッセージ色の強い作品になっています。開いている目に「眼力」が無いのが残念です。構成としては面白いのですが、表情も大切な要素です。自画像の表現力は絵だけでなく、表情も大切な表現力なのです。

 3年生になり、週2日に通う日を増やしました。ペースが上がります。


 (高校2年生終盤の構成デッサン)


 この頃から、具体的な受験校を決めていきます。私大受験対策もこの頃から始めます。手の構成デッサンを開始しました。まだまだ手の柔らかさや質感が上手く表現されていません。手の色数も逆光で暗い中にも色数が必要なのですが、ただ黒いだけになっています。まだまだ描き込んでいかないといけません。






 (高校2年生終盤の静物デッサン)

 もう、いつ受験をしても良いほどのデッサンになってきました。床の写り込みも影もよく観察されています。物の設置感もよく描けています。
形態感も随分と出ています。

 黒色が潰れ気味になるのが残念な作品です。美しい黒を出すのは、経験値です。より多くのデッサンを描くことが大切です。名だたる美大に合格するには「受験までにデッサン100枚」が目標です。

 2年生までは、週1日のペースで通いました。


 (高校2年中盤の静物デッサン)

 河合さんは高校1年で絵を始め、週1回、2年生の段階でここまで描けるようになりました。調子(光を感じる白と影を表す黒の具合い)も繊細になりました。色数も数段に増え、中間色の美しさも出てきました。

 この作品は夏期講習会のもので、この量(B3サイズ)を、6時間で仕上げられるまでになってきました。材質を感じさせる質感も表現できるようになり、デッサンが面白くなって来る頃だと思います。


 (高校1年中盤の静物デッサン)

 色数が随分と増えてきました。花瓶の色も増えてきましたが、形態感としては力不足が否めません。手前は描けていますが、見えない奥行きが感じられません。二次元に三次元を表現するには、見えない回り込んだ奥にも物があるかのように感じさせることが大切です。

 アトリエ波では、デッサンにおいて「床」「テーブル」をしっかり描かせます。パース(形)を正確にとる練習に、四角いテーブルはもってこいなのです。初心者がテーブルを描くと、大抵は波打ちます。一枚の平らなテーブルを美しく描くことで、画面に空間が出ます。さらにデッサンが2割も3割もまして、美しく見えるのです。河合さんも床にはこだわってきました。随分と床が床らしくなってきました。

 (高校1年入塾当時の静物デッサン)

 色数も少なく、白と黒のコントラストだけで描いています。まだまだ鉛筆を使い慣れていないので、色数を多く出せないのでしょうね。トマト缶の上面もテーブルに対し平行が出ていません。楕円の見え方、描き方がまだ身に付いていません。モチーフがテーブルに接している設置点の表現も甘いのも感じます。

 しかしながら初心者はなかなか黒い色を怖くて思い切り乗せられないのですが、早い段階で黒色が乗せられているのは、見込みがあります。




 (高校3年生終盤の構成デッサン)

 私大対策で出した課題は、「生き物と手を構成して描け」というテーマでした。のちのちこの作品が、河合さんの大学合格に大きく関わる作品となりました。金沢美術工芸大学のデッサンの試験課題は「紙袋の中に動物を入れて構成デッサンせよ」というものでした。普段、動物をデッサンする機会はなかなかなく、描いたことがない物を試験で描くのは、怖い物です。ですから、日頃からありとあらゆる物を描かないといけないのです。河合さんは金沢美術工芸大学の試験で、紙袋にこの鳥を入れて描き、合格しました。

 この作品はもう円熟していて、合格ラインに達していると言えます。いつでも受験できる状態です。

 3年間で目標の「デッサン100枚以上」を軽くクリアーしました。



 私は中3の夏に、このアトリエを知り、その頃には既に美大へ進むという明確な目標がありました。そして高校1年から、本格的に美大受験対策を始めました。デッサンは当初は全然上手く描けませんでしたが、一枚一枚描くにつれ、上達していくのが嬉かったものです。3年間のある時期に伸び悩んだこともありましたが、振り返ると楽しんで取り組めました。
 反対に平面構成は苦手意識が強く、一枚仕上げるのが大変でした。初めて平面構成の参考作品を見たとき、正直頭の中はクエスチョンマークで一杯でした。私は、日本画のような着彩をデザインの対策で制作していくモノだろうと勝手に想像していたので、「デザインって何だ?」という状況からのスタートでした。
そんな私ですから、よく先生から「これデザインじゃないよ!」と言われることもよくありました。それでも数をこなしていくうちに、なんとなくデザインとは何かが分かってきて、3年生の頃には自分の伝えたい事が構成できるようになってきたかなと思います。参考作品を見て研究しましたが、なるべく平面構成は「自分にしか思いつかないモノを…」と思いやってきました。この「自分にしか…」という所は、大学進学、就職しても付いてまわるモノだと思うので、これからも自分の感性を磨いていきたい。

 アトリエ波は、少人数体制で講評を密にやって頂け、今まで描いてきた一枚一枚が決して流れ作業ではなかったこと、同じく美術を志す仲間と切磋琢磨して過ごせたことが、志望校に合格した最大の要因だったと思います。
   岐阜県立武儀高等学校2014年卒業

多摩美術大学 グラフィックデザイン学科合格(現役合格)
金沢美術工芸大学 視覚デザイン学部合格(現役合格)