名誉棄損に関する法律

 法律相談会で名誉に関する相談を受けることがあります。 最近は、特に増えているように思います。
  職場やSNSなどで名誉や信用を侵されたという相談のほか、 「悪口をいっただろう」と言いがかりをつけられて困っている、 となどという相談もあります。  スマホなどで簡単に情報発信できてしまう、感想を述べたつもり が悪口になってしまったという事例でした。
 ここでは何が法に触れ、救済されるのか? 司法書士はどのような救済の依頼を受けられるのか? について簡単に短く読みやすくまとめてみたいと思います。

 
刑事と民事と
不当競争防止法
 名誉棄損という犯罪があります(刑法709条)。
@不特定多数の人に伝わる可能性がある状態で、A人の社会的な評価を下げる事実を、B口頭・文書・インターネットなどで示す、犯罪です。
 要件が厳格で捜査機関が立証して初めて犯罪となります。
 したがって、民間人の間の話ではありませんが考え方の基準にはなります。
 (司法書士は検察に対する告訴状の作成を行いますが、捜査機関がこれだけで動きだすことは少ないのが現状です)
 保護されるのは「外部的名誉」すなわち「人の社会的な評価」です。
 他方、民事ではこの刑事で保護される「外部的名誉」に加えて「名誉感情」つまり「自尊心」を害するような場合(ひどい侮辱など)も損害賠償(民法709条)の対象となり得ます。

 また、住所や名前などが流出した場合などプライバシーの侵害も憲法13条の「幸福追求権」の考え方から権利を侵害したとして損害賠償の対象となる場合があり得ます。

 噂話や、インターネットを通じた書き込みなどは多くの場合、このような法律に触れます。

 さらに、「事業者」の「営業上の信用」(営業活動に伴う経済的な価値ある信用)は「競争相手」が「虚偽の事実」を不特定多数の人に伝わる可能性がある状況の下、口頭・文書・インターネットなどで示すと不当競争防止法に触れる可能性が生じます(同法2条1項14号)
 (以下では、名誉やプライバシーが侵されることを単に「侵害」と呼び、この「侵害」を行う者を「侵害者」と、「侵害」を構成する情報を「侵害情報」と呼びます。)
 
救済と
救済の具体的方法
 刑事ではもちろん刑罰により社会に害悪となる行為は禁止圧迫されます。
 民事では金銭による損害賠償として救済されます(民法417条・709条)。
 司法書士は、損害賠償請求が140万円までであれば民事訴訟においても任意の交渉においても代理人となることができます。
 侵害に対する差止や保全処分が認められる場合もありますが、「情報」は、ひとたび広がると収拾がつかなくなるため、司法書士に来る相談は、すでに何らかの悪い情報が拡散した後の状態であることがほとんどです。
 さらに名誉回復措置(民法723)(謝罪広告など)を求めていく場合もありますが、訴訟額160万円となり、司法書士の訴訟代理権の範囲は超越しす。
 (差止め、保全処分、名誉回復措置などについて司法書士は本人訴訟等の手続きを書面作成業務で支援することになります。

救済の具体的方法
  侵害者がわかる場合、まず内容証明などで警告する場合が多いでしょうし、これのみで相手(侵害者)が自らの行為が法に触れ訴訟や損害賠償の可能性あることを認識し、解決する場合がほとんどでしょう。
  ただし、「事業者」の「営業上の信用」に関する場合、たとえば自社の商標を侵害する商品をA社が製造しているので扱わないようにしてほしいなどと流通卸に内容証明などで通知する行為が不当競争防止法2条1項14号に触れる場合があり得ます。この場合はA社の製品が間違いなく自社の商標を侵害しているのかを厳密に分析して行動を起こすべきでしょう。
  この後、相手方との交渉を通じて問題の解決を図りますが、民事訴訟による解決を目指す必要も生じえます。
  民事訴訟となった場合の損害賠償額は低廉であることが多いのですが、内容証明郵便などによる一連の手続きの終局として想定しておくべき手続きであり、多くの場合和解が試みられます。
 
インターネットを使った
名誉の侵害
前提としての言論の自由
 憲法は思想の自由(19条)学問の自由(22条)を保証し、これを発信し受け取る言論の自由(21条)も保障しています。
 批判も保護されるべき言論である場合もあり、特に不特定多数を対象にするインターネットでは言論を守ることと、名誉を守ることのバランスが難しくなります。

(以下 次ページ
プロバイダ責任法について

インターネットを使った侵害への対処

侵害者として削除請求、発信者情報開示請求や損害賠償請求を受けた場合の対応ロバイダ責任法について

この記事は平成26年11月現在の法律により作成しています