消費者問題と法律のお話
チャートでは到底書ききれない法律のことを、もう少し詳しくご紹介します。。 ◆被害増加の傾向◆ 訪問販売、電話勧誘販売、マルチ商法、内職商法、送りつけ商法などいわゆる悪徳商法は後を絶ちません。 近年、被害件数は増加しているようです。 マルチ商法、士商法、霊感商法、キャッチセールス、デート商法、催眠商法、展示会商法、点検商法、などのいわゆる悪徳商法からの救済のための法律は、『特定商取引法』『割賦販売法』『消費者契約法』『消費者基本法』『貸金業の関連法』など複数の法律があります。 これらの法律は、『商法』が改正考案される度に、それを追うかのごとく規制を加えてきたという歴史から、構造が多少複雑で入り組んでいます。 そして、悪徳商法を志す者は、今現在も法の抜け穴を探して、これらの法律を研究しています。 例えば、平成18年、『商法』から『会社法』へ、会社関係の法律が切り替わりました。これにより、「株式会社」を簡単に設立できるようになりました。 会社の登記を行う司法書士の立場からではありますが、悪事を行おうとする者たちがこのことに着目し、「株式会社」の信用を悪用しないことを望みます。 悪徳商法と対峙する時、時には、法律に規定された救済方法をを潜脱する形態の商売を、何とか法の解釈で押さえ込むことも必要になります。 そして、その法律の解釈判断は、最終的には、裁判所の判断になります。 われわれ司法書士の”簡易裁判所訴訟代理”や”法曹人口増加”は、この「司法判断」への敷居を低くし、法のセーフティネットからこぼれた方を救うことも目的としているのです。 ◆クーリングオフ◆ さて、救済のための方法ですが、一番有名で、即効性のあるものはクーリングオフでしょう。 これは、契約書などの書面を取り交わしてから8日間(注意※根拠となる法律により期間は異なります)無条件に契約をその契約時にまで遡って解除することができる制度です。 既に引き渡された商品の引き取り費用などのクーリングオフにより解除された契約を清算するための費用は業者の負担となります。 しかし、クーリングオフの根拠となる法律により、クーリングオフを行うための要件が少しずつ異なりますので、実際にクーリングオフをすることが出来るのかを各々の事例で検討する必要があります。 ところで、一般的に、8日などの「クーリングオフ期間」を過ぎると、もはやクーリーングオフの権利は行使できない、と考える方も多いようですが、法律にはクーリングオフ期間が進行するための要件というものを定められており、これが満たされないと、いつまでたってもクーリングオフができるという場合があります。 例えば、多くの法律が、業者が消費者に対して契約書などを交付することを求めており、これに反して、業者が契約書を交付しないような場合は、クーリングオフの期間がいつまでも進行せず、いつまでたってもクーリングオフができる、といったことも起こります。 ただ、クーリングオフを行っても、このときの業者の資力が足りず、代金の回収がはかどらないといった事態は起こりえます。 ◆消費者契約法◆ クーリングオフが使えない場合にも別の法律で救済される場合があります。 消費者契約法には、 ・事故車を「事故車ではない」などと、業者が事実と異なることを消費者に告げ、消費者がこれを事実であると誤認した場合、(不実告知) ・「これは確実に値上がりします」などと、業者が、不確実な事実を断定的に判断し消費者に告げ、消費者がこれを誤解して契約したような場合、(断定的判断の提供) ・業者が重要な事柄について、消費者の利益になる事実のみを告げ、不利益になる事実をわざと告げなかったような場合、(不利益事実の不告知) ・消費者が、セールスマンに「いらないので自宅から出て行って欲しい」と告げたにもかかわらず、出て行かないような場合、(不退去) ・消費者が、業者の店舗から「いらないのでもう帰ります」といったにもかかわらず、業者がこれを許さず契約をさせるような場合、(退去させない) といった場合、消費者はこれらの行為により締結してしまった契約を6ヶ月間は取消すことができる「取消権」が定められています。 ◆民法◆ 詐欺や脅迫による契約は取消すことができる場合があります。 ◆抗弁の接続◆ ローンを使って、商品やサービスを購入してしまったが、販売業者との契約を解除しても、ローンを払い続けなければならない、といった場合にはこの抗弁の接続という制度が利用できる場合があります。 これは、大まかにいえば、「販売業者に対してクーリングオフを行った」「販売会社が商品を渡してくれない」等といった「販売会社への抗弁」を与信を提供する信販会社等へ主張し、それ以降の支払を停止することのできるという制度です。 ◆救済へ向けた検討の順序◆ 救済へ向けた選択肢の考え方として、 A クーリングオフ(契約の解除)・契約の取消し等を行い、契約の拘束から逃れることができるのか? B 金員を回収できるのか? C 本来第三者である、信販会社などへ対抗し、支払を中止し被害拡大を停止できるのか? といったことがポイントとなります。 ここから、Aについては (1)まず特定商取引法、割賦販売法などで契約をクーリングオフできるか? (2)消費者契約法等で契約を取消せないか? (3)民法の詐欺による取消などを利用できないか? 等と検討してゆきます。 Bについては、 (1)相手に実態があるのか? (2)資産状況は破綻していないのか? (3)仮差押が可能か? (4)本失効が可能か? 等と検討して行きます。 Cについては、 (1)『抗弁の接続』が可能か? (2)密接関係性の理論などが適用できないか? (3)利息制限法への引き直し交渉を行うのか? 等と検討して行きます。 業者が誠意ある場合は、交渉で解決できる場合もあります。 しかし、法の穴を探すような悪質な業者には、自己が法的に許されないことをしているとの認識がある場合と、法の裏をかいているから大丈夫であるとの認識を持っている場合の2通りあるようです。 前者の場合は司法書士などの介入で解決する場合も多いのですが、後者の場合は、訴訟で、司法判断を仰ぐ必要が生じる場合もあります。
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