横領?
後見・保佐・補助について
市役所市民相談室などへ行くと、「親の面倒をみている(介護している)兄妹が、親の資産を勝手に使っているようだ・・・遺言も書かされているようだ・・・」という相談をもらうことがあります。
もしそうなら横領ともいえるのですが、刑法244条により同居親族間の行為として刑が免除される場合が多いでしょう。
このようなときは、通常、家庭裁判所へ後見人(親族の状態に応じて保佐・補助の申し立てをするようにアドバイスしています。これにより、家庭裁判所の財産管理に対する監督が始まることになります。
また、介護などを行っている側も、きちんと財産管理をしているならこれを拒む理由はないはずです。
財産管理のみを後見人などに任せたり、金銭についてのみ後見制度支援信託を利用し、介護などの身上看護は親族が行うという形態もあります。
相続発生後の処理
他方、相続発生後に被相続人と同居していた兄弟など親族の横領を疑わせる事実が発覚した場合は、まずその証拠を押さえまた、財産の流出を抑制します。
- 相続人ならば、単独で被相続人の銀行などの取引履歴の入手ができます。これにより不自然な被相続人が使用するはずのない大金の引き出し等を把握します。
- 被相続人が、兄妹など親族の名義で作っていた口座があるという場合は、口座の中の預金は被相続人のものであり口座をロックしてほしいという依頼を銀行に対して行います。
- 被相続人名義であるはずの不動産が兄弟など親族に「贈与」されていた、しかし、被相続人は認知症であった。というような場合は、法務局で利害関係人として登記申請の付属書面、を確認します。登記原因証明情報などの筆跡が被相続人のものか、などを確認するためです。
話し合いである遺産分割協議で、横領を認めそれを考慮した遺産分割になる可能性は難しいので通常家庭裁判所の遺産分割調停・審判を利用します。
しかし、この前に、「遺産の範囲は横領された部分を含んでいる」ことをはっきりさせるために地方裁判所へ「遺産の範囲確定訴訟」を提起する必要があります。
(調停・審判を先行させた場合は「遺産の範囲確定訴訟」の結論が出るまで手続きを停止したり、手続きの中で遺産の範囲についてのみの争いがなくなれば「中間決定」(家事事件手続法80条)を行う場合もあります)