父親や母親が亡くなり、相続の登記が必要になった。大した評価の資産でもないので簡単に兄弟などの親族間で遺産の分割に向けた話し合いがまとまると考えて司法書士に登記に向けた相談をした。
しかし、、その後、予想外に話し合いがまとまらなくなった・・・
話し合いをすればするほど感情のしこりが大きくなる・・・
といった事例に遭うことがあります。
景気の影響、子供達の配偶者やその卑属の意向を無視できなくなる事、等々個々の事例でさまざまな理由があるようです。
そこで、ここでは、遺産分割についてご説明します。
相続人間に紛争が起きないように、遺言などで予防をするのですが、それでも、一部の遺産についてのみ分割方法を指定したときなどのように相続人間で遺産分割の協議・調停・審判が必要となる場合があります。(予防措置を取らない場合は必然となります。)
◆遺産分割の協議
相続人の全員で遺産の割り振りについて合意ができればこれに越したことはありません。
遺産分割協議書を作成する場合は、疑義のないよう、法的に有効になるよう、登記・預貯金・株式・証券の手続きに使用できるように作成する必要があります。そして、相続人全員の実印による押印と印鑑証明書が必要になるでしょう。
登記など、複数の手続きに使用することが想定される場合は、遺産分割協議書も複数作成し、印鑑証明書も複数用意しましょう。
◆家庭裁判所の利用
1、家庭裁判所の特徴
家庭裁判所は、本来、法律により勝敗をつけてしまうことに必ずしもなじむとはいえない家庭内、親族内のさまざまな事象を取り扱い、「家庭の平和」を目指します。このため、家庭裁判所は、地方裁判所や簡易裁判所と異なり、法律による勝敗を決するのに直接影響しないような様々な「事情」を一般市民である当事者から汲み取ろうとします。この傾向は、当事者の話し合いをまとめ、これに法的な効力を与えようとする家事調停において顕著になります。
また、家庭裁判所は、家庭内、親族内の当事者にしかわからない事実や事情を汲み取るために、当事者に出頭してもらい、当事者の意見を聴くことを大切にしているようです。
さらに当事者に利用しやすくすることで容易に家庭の平和を目指してもらうために、調停などの申立費用が、地方裁判所や簡易裁判所に比べてとても安いことも家庭裁判所の特徴です。
このように、家庭裁判所の、特に調停手続は、法律を知らない市民が利用しやすい手続であるといえるでしょう。
2、遺産分割調停
親族間で遺産分割の協議がまとまらない場合は、家庭裁判所を利用します。
通常はまず遺産分割の調停を申し立てますが、戸籍や遺産の目録が必要になります。
・ 調停の申し立てるべき家庭裁判所(管轄)
遺産分割を求める相続人は、相手方の住所のある家庭裁判所へ遺産分割調停申立書・収入印紙・家庭裁判所が郵送で文書のやり取りをするための切手を収めて、遺産分割調停の申立をします。
例えば、3人の兄弟間で遺産分割争いがあり、長男が遺産分割調停を申し立てる場合は、弟のうち一人の住所を管轄する家庭裁判所へ申立をすることになります。
兄弟が遠隔地に住んでいるなどして容易に出頭できない場合は、相手方が別の家庭裁判所で手続を行うための移送申立を行うこともありえます。
また、一度被相続人の死亡時の住所を管轄する家庭裁判所へ遺産分割審判を申立て、その家庭裁判所において事件を職権で遺産分割調停に付してもらうことで、結果的に遺産分割調停を被相続人の住所地で行うという事もあります。
・ 遺産目録
調停の申立書には、被相続人の遺産を目録にして添付します。これが分割の話し合いの対象になるからです。
相続人の誰かが、遺産を隠してしまってよくわからない場合などは、遺産分割調停の前に「遺産の範囲をめぐる紛争」について、別の調停を申立て、その中で家庭裁判所に職権による調査をお願いする事もありえます。
・ 遺産分割調停は、あくまでも話し合いです。しかし、調停委員2名が合意に至るように進行、説得を行いますので、法律的に妥当で公平な結果から離れた結論、例えば弱者が一方的に不利になるような結論はありません。
・ 調停を申し立てた側も、申し立てられた側も、自己の主張や事情、そしてその証拠を整然と家裁書記官・調停委員・家事審判官にわかるように提出する必要があります。遺産分割に関する手続は、他の家庭裁判所における手続に比べて、争いとしての正確が顕著なので、自己の主張・事情・証拠を関連づけ、正確にわかってもらう必要があると言われています。
・ 話し合いがまとまり、調停調書が作成されると、これによる登記などが可能になります。
・ 遺産分割手続に関与する事を望まない相続人は、他の相続人に「相続分の譲渡」を行い手続から脱退する事も可能です。
3、遺産分割審判
・ 調停で話し合いがまとまらない場合、手続は自動的に遺産分割審判へ移ります。
・ 審判とは、話し合いではなく、当事者の主張と証拠により、裁判官である家事審判官が法律に従い遺産の分割を決めてしまう手続のことです。
法律に従うのですから、当事者の事情はあまり汲み上げられず、当事者が法律に従い主張し、かつそれを証拠によって立証できたその結果に裁判官である家事審判官は拘束される事になります。
4、即時抗告
・ 遺産分割審判の結果に不満がある場合、審判を受けてから2週間以内に高等裁判所へ即時抗告を行います。地方裁判所や、簡易裁判所の裁判に対する「控訴」にあたります。
5、 遺産分割に向けた話し合いがこじれそうな場合は、早期に家庭裁判所に対して遺産分割調停を申立て、冷静に話し合えるような場を設定することが合理的であることも多いのではないでしょうか。
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