相続紛争は、高額納税者の世界のことではありません。
「資産数千万、そのほとんどが土地建物で兄妹2人のみ」といった一般的な核家族のお父さんが亡くなったときにも、これまでの家族の軋みが浮き上がり、わずかな金額で争いが起きることがあります。
ここではそんな実例をフィクションを織り交ぜながら、対処とともにご紹介します。
【事例1】
内縁関係のA(女性)とB(男性)。
Aが病弱なBを支え、Bの個人年金保険も支払い老後に備えていましたが、Bが突如死亡したため保険約款上の『死亡時における年金基金の現価に相当する金額』が遺産となってしまいました。
このためBと全く接触の機会がなかったBの兄弟姉妹の子供たちへ相続されてしまい、Aは老後のための資金を失うことになってしまいました。
★解決へ向けての対処★
まず、Aが面識を持つ相続人であるBの兄弟姉妹の子供の一人Dと接触し、この人から相続分の譲渡を受けました。
続いて、相続分を保有するものとして、家庭裁判に対して遺産分割調停を申し立てました。
この遺産分割調停の中で、AとBとの関係を訴えることで生前のBとの面識すらないC以外の相続人との遺産分割協議をまとめて行きました。
(司法書士による書面作成支援で解決)
☆★こうしておけばよかった★☆
Bには子がなく、既に両親もいないため、遺留分のない相続人である兄弟姉妹、あるいはその子供たちを排除するために、内縁の妻に遺贈する遺言を遺しておくべきでした。
また遺言の執行の際にBの相続人である兄弟姉妹の子供たちの協力を仰ぐ必要のないように遺言執行者を選任しておくべきでした。
【事例2】
Aの元へ
『Aの父親であるXが死亡した。
この遺産分割協議で納得せよ。』
という一方的な内容の手紙がAの兄弟姉妹を名乗るDから届きました。
驚いてAが、その母親Bに尋ねると、BとXは内縁関係であったことがあり、AはXの子供に違いないが、出生以降のAとXの接触はないとのことでした。
相続を承認するのか放棄するのか?遺産分割案が妥当なのか?そもそも債務を含む遺産の全容がつかめないAは途方に暮れてしまいました。
★解決へ向けての対処★
まず 「相続の承認または放棄の期間伸長の申立」 を家庭裁判所に対して行い調査と判断の猶予を得ました。
続いて、Aは自らの手で、
@ 相続人の一人として金融機関に対して被相続人の口座の取引歴の開示を求め(最高裁平成21年1月22日民集63巻1号228頁)、
A 指定信用情報機関に対する被相続人の債務の調査を行い、
B 不動産の登記情報を取得し抵当権の記録を調査し、
C Xが親族身内から借金をしていないことの表明保障をDから得ました。
Aは、これらによりXに債務が存在しないことの確信を得ました。
その後、AはDに対して遺産目録の作成を依頼しました。これを受けてDは相続登記を依頼した司法書士に対して、この目録作成を含むAの意見を加味した遺産分割協議書の作成を依頼することで事件は解決しました。
☆★こうしておけばよかった★☆
全く面識も信頼関係もないAとDの間で遺産分割協議をまとめるためには、公平な第三者である司法書士に委任状を交付して遺産管理人となってもらい、財産目録の作成を依頼してから当事者同士で遺産分割協議をまとめるとスムーズに進んだものと思われます。(この司法書士は遺産分割協議に関与しません)
【事例3】
父親Gが亡くなり、
その相続人がA・B・C・Dの4人でしたが、
遺産分割協議成立の前にDが亡くなりました。
Dに子供はありませんでしたが、配偶者Eがいました。
Dが生存していれば
A・B・C・D各1/4づつの相続分でしたが、
Dが亡くなったことにより、Dの取得するはずだった相続分の1/4(すなわち1/4×1/4=1/16)をA・B・Cが各1/16×1/3=1/48づつの割合で相続することになり、結果A・B・C各13/48づつ、Eは9/48の相続分となりました。
ところがその後、DのEに対する 「すべての遺産をEに対して相続させる」 旨の遺言が発見されたことがきっかけとなり、元々折り合いの悪かったA・B・CとEは1000万円ほどの遺産(土地)をめぐって争うことになりました。
★解決へ向けての対処★
遺産を全て売却し、代金を平等に分割する換価分割の方向で解決がなされました。
しかし、これには仲介手数料などの手間と費用がかかります。
また、A・B・C・E各人が独立して己の持ち分を売却したとして譲渡所得税を納付するように遺産分割協議書を設計しなければ、代金の分割の際に「贈与」と認定される可能性が生じるので、これに対応しました。
☆★こうしておけばよかった★☆
まず、Gが遺言を遺し、相続人間の紛争を防ぐことが考えられます。
また、Eは当初からDの遺言の存在とその内容を明確にしておくべきでした。
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