遺言とは、遺言を残す人(遺言者)の生前の意思を示すもので、民法はこの遺言によりできる事項を定めています。
「長男には○市○町○番の土地を相続させる」、「○○法人に寄附する」、「○○に○市○町○番の土地を遺贈する」「○○という財団法人を創る」などの様に、遺言者は、遺言によって自己の財産を思うとおりに処分する意思を示すことができます。
ただし、配偶者と子供に与えられた遺留分を犯す場合は減殺される可能性が生じる、などの制約もあります。
遺言では以下の様なことができるとされています。
・ 法定の相続人を排除することとこの排除の取り消しができます。
・ 相続人が取得する相続分を指定することができます。
・ 相続人に特定の不動産を相続させる等の遺産分割方法の指定をすることができます。
・ 期間を定めて相続人が遺産を分割することを禁止することもできます。
・ 相続人からの遺留分減殺請求があった場合のその方法を指定することができます。
・ 相続人にも相続人で無い者に対しても遺贈ができます。
・ 仏壇仏具などの祭祀を受継ぐ人を指定することもできます。
・ 後見人の指定、認知という親族上の身分に関することを行うことができます。
・ 信託を設定することができます。
・ 平成22年4月以降に契約した生命保険については、受取人を指定・変更をすることができます。
その他、自由にあなたの心情を遺すことも勿論できますので、遺言の作成をお勧めします。
いろいろな事情、いろいろな気持ちがあります。
・子供が居ない ・離婚が成立していない別居中の妻が居るが、内縁の妻も居てよく面倒を見てくれる ・長男の嫁がよく世話をしてくれるが相続人ではない ・放蕩息子に遺産をやりたくない・・・・などなど・・・・あらゆる事情に対処するためにも、まず、遺言を考えてみるべきでしょう。
遺された者の立場においても、遺言という道しるべがあれば、争いは起きにくいはずです。
1、自筆証書遺言
全文・日付を全て自書し直筆で署名して押印して作成するものです。
費用はかからず、要点を網羅したキットも発売されているようですが、 遺言でできること、できないこと、無効となること等を確認するために、司法書士等に相談することをお勧めします。
さらに、作成した遺言が発見されて、実現されなければ意味が無いのですから、遺言の保管者と遺言執行者を定めておかれることをお勧めします。
2、公正証書遺言
公証役場で作成する遺言であり、遺産の評価額に応じた費用がかかりますが、公証人が法的に有効な遺言にします。また、遺言の保管と検索が万全なものとなります。
司法書士は、公正証書遺言の作成が相当と考えら得る場合、文案等を作成して、お手伝いをすることになります。
3、秘密証書遺言
秘密証書遺言は、公証人の面前に封書に入れた遺言を差し出し、自分の遺言であると述べて、遺言とするものです。
公正証書遺言は、公証人が法的に実現可能な遺言であるかをチェックしますが、秘密証書遺言はこれがなされませんので、司法書士と綿密に打ち合わせをして実現可能なものにする必要がありますし、相続発生時には検認の必要があります。
しかし、自分で遺言を自署する必要がなく、ワープロなどで遺言を作成してもかまいませんので、司法書士と打ち合わせして遺言を作成させ、それをそのまま公証役場に持ち込むことができますし、内容は勿論秘密にすることができます。
また公証役場に対する報酬も1万1000円と定額です。
遺言を入れた封書には、写真などを入れてもいいでしょう。
意外に知られていない秘密証書遺言を活用されてはいかがでしょうか。
外国籍の方も日本で遺言を遺すことができます。
1、“遺言が有効に成立したか?” “この有効な遺言の効力発生時期はいつか?” の2つの問題は遺言をする人の本国法が適用されることに注意してください。
2、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言などの遺言作成の方式に関しては日本の民法に従い遺言を作成しても有効となりますので、外国籍の方も日本において自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言を作成することができます。
もっとも簡単な遺言は、「全ての遺産を妻であるXに相続させる。」といった内容になるのかもしれません。この場合、法的にどのような効果があるのでしょうか?
1、不動産を相続登記する場合の登記手続が簡単になります。
この場合Xが単独で相続登記を申請することができ、他の相続人の協力が必要ありません。
2、遺産が土地や建物の賃借権の場合、この「相続させる」遺言があると、賃貸人に対し賃貸人の承諾なしで相続により賃借権を取得したことを主張できます。
3、遺産が農地である場合、遺贈すると、農地法3条の許可が必要ですが、この「相続させる」遺言があるとこの許可がいらなくなります。
※ 上記のような効果が発生する「相続させる」遺言ですが、当然のことながら法定配偶者や子供などの相続人に「相続させる」と記載しなくてはなりません。
※ 債務も特定の相続人に「相続させる」ことになるとされています。
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